暖冬と消費社会の行方

この原稿を書いている12月最初の週、ドイツの広場にはクリスマスの市が立ち、高いクリスマスツリーが立てられ、ホットワイン(グリューヴァイン)の香りが漂っている。いよいよ年の瀬だ。

しかし、ここミュンヘンでは、12月だというのに、日中の気温がまるで4月を思わせるような暖かさだった。

クリスマスらしい雰囲気ではない。

私は16年前からここに住んでいるが、クリスマスの市の横の喫茶店で、人々が屋外のテーブルでお茶を飲んでいるのを見たのは、初めてである。

グリューヴァインといえば、きりで揉みこむような寒さの中(雪が積もっていれば、もっと良い)、ふうふう息でさましながら飲むのが、いちばん美味しいのだが・・・・。

季節感に欠けること、はなはだしい。

 今年11月の平均気温は、ドイツで気象観測が始まって以来、最も高かった。

ドイツで冬の寒さが和らぐことは、暖房代が節約できるので、生活する上では、悪いことではない。

ドイツの寒さが苦手という人には、朗報だ。

屋外でコーヒーやビールを飲むのが大好きなドイツ人も、大歓迎するだろう。

でも、なんとなく気味が悪い。

ゴア副大統領が出ている教育映画「不愉快な事実」を見るまでもなく、地球上の平均気温が現在上昇する局面にあり、アルプスの氷河などが溶けるなどの現象が起きていることは、紛れもない事実だ。

さらに、1990年頃から、ドイツ、日本、米国などで洪水、突風、台風、ハリケーンなど、気象災害による被害が増えていることも、統計上明らかである。

2002年に旧東ドイツに大被害をもたらした、過去100年間で最悪の洪水を覚えておられる方も多いに違いない。

さらにその翌年の夏には、ドイツにいるとは思えないような、猛暑のために、扇風機やクーラーが飛ぶように売れた。

 私は気象学者でも数学者でもないが、この極端な暖冬は、自然が我々に送っているメッセージであるという気がする。

ジェット旅客機のために、我々は世界の隅々まで旅行できるし、高速道路網が発達しているために、自動車で欧州を縦横に旅行することも可能だ。

だがこれらのエネルギー消費によって、人類が大気中に放出する二酸化炭素の量は、爆発的に増えた。

便利な消費社会のつけが、気候変化という形で、我々の足元に迫っているのだろうか。

緑の党が党大会で、気候変化の防止を重要な活動テーマにすることを決めた。

彼らが主張するように、我々はアウトバーンに全面的にスピード制限を導入するなど、生活スタイルを変えて、二酸化炭素の排出量を減らさなくてはならないのだろうか。

はたして、人類は膨大な二酸化炭素の放出を伴う、消費社会の便利さを、あきらめることができるだろうか。

市民の環境意識が、他の国に比べて高いドイツで、今後この問題をめぐる論争が、盛んになる可能性もある。

読者の皆さんは、どうお考えになりますか?

筆者ホームページ http://www.tkumagai.de

週刊ドイツ・ニュースダイジェスト 2006年12月14日